子どものための「ピアノ奏法」

 

もうひとつのコラム、

『ピアノは生きている~「響きを聴くレッスン」のために』

に、ピアノの音の鳴るしくみを書きました。

 

このようなしくみのピアノで、いい音を出し美しく弾くためには、

身体で感じる感覚が、とても大事です。

 

どんな姿勢・構え・手のフォームで、指の下ろし方で、

打鍵すると、どんな音が出るか、

感じていくこと。

 

余分な力がたくさん入って、筋肉の緊張が強いと

それが、感じられないのです。

 

指を動かすことにばかり意識がいくと、そうなりやすいです。

 

そして、ピアノ演奏は、日常生活での動きにはない、

とても複雑な高度な動きなので、

だからこそ、練習によって癖がつきやすいのです。

 

(年齢の低いときからたくさん練習してきた子や、難しい曲が弾ける大人でも、癖を取るのが難しかったりします。

また、最初に習った時に、手をまるくと習って指先を丸め込んで弾いていたり、指を振り上げたり、鍵盤に打ち込んで弾くような癖がついていると、直すのには根気が必要です。)

 

よいフォームは、

鍵盤に触れる指先の部分(爪の近くではない。もう少し指のハラに近い、ちょうどよいタッチポイント)に、

腕の重さを乗せて支えることから始まります。

 

小さい年齢の子は、この「支える」が難しいのです。

それがないまま、どんどん弾くと、

どうしても、指を振り上げて弾く弾きかたが癖になってしまいます。

 

筋肉の話ですが、

前腕(ひじから先)には、「伸筋」と「屈筋」があります。

鍵盤に手を置いたとき、上になるのが伸筋です。

 

屈筋は、反対側にあり、腕を曲げたときに縮みます。

 

指を振り上げて弾くと、この上側にある伸筋が、緊張してしまいます。

これが悪い癖の始まりです。

 

小さい子のレッスンで、最初の弾きかたを伝えるのは、

とても繊細です。

 

ちょっとした声掛けで、小さい子は、すぐに変化があります。

 

全部の指を下に向けて…、手の平を感じて…

鍵盤に手の重さを乗せて…、ポーンと、下ろすだけ。

 

とても、きれいな音が出ます。

 

でも、すでに

幼稚園で弾いた鍵盤の弾きかたや、普段からの遊び弾きで、癖がついてしまっていると、

また癖が出たりします。

 

根気よく、よい弾きかたが身につくまで、

難易度を先にすすめないで、ゆっくりじっくり。

けれど、音楽そのものが楽しく、味わえるように。

 

そのために、いろいろな工夫をしています。

 

習って何年かした子は、

レッスンで日々伝えているので、年数が経つごとに、

弾きかたのアドバイスがよくわかるようになります。

 

そして、どんどん「音楽でのコミュニケーション」が、レッスンでできるようになってきます。


「弾いて楽しい」は、

身体にとって「気持ちいい」(無理がない)、ということとも、一致していると思います。